
そのDMは、僕がこのブログを立ち上げ、X(旧Twitter)のアカウントを開設して、まだほんの数日が経った頃に届きました。
当時の僕のフォロワーは、たったの1人。
まさに、大海原に浮かんだ一本のわらのような、誰の目にも留まらないであろう、ちっぽけな存在でした。そんな僕のアカウントに、一通の丁寧な、そして実に“甘い”言葉で綴られたDMが届いたのです。
実際に届いたDM(固有名詞は伏せています)
はじめまして!
突然にご連絡を失礼いたします。
わたくし株式会社〇〇の〇〇としまして、主にエンジニア・プログラマ様向けリモート案件や正社員求人をご紹介しております。
SEをなさっていると拝見し、カイ様にリモートワークのご紹介機会をいただけないかと思いご連絡いたしました
(一部副業案件もございます)
もし少しでもご興味がございましたら、ご経験や希望条件に沿った案件情報をお送りさせていただければと思いますが、いかがでしょうか…?
今は積極的にお探しでない場合でも、「今後の参考としてどんな求人・案件があるか見てみたい」といったご要望も承れます
お返事お待ちしておりますので、ご検討のほどどうぞよろしくお願いいたします!
一見すると、非常に丁寧で、こちらの状況を気遣ってくれているかのような文面です。
しかし、僕はこのDMを読んだ瞬間、血の気が引くと同時に、腹の底から熱い怒りが込み上げてくるのを感じました。
この記事は「偽装請負」と「多重請負の闇」の告発です
なぜなら、このDMの向こう側に、かつて僕の心を蝕み、うつ病のどん底へと突き落とした、IT業界の根深い“闇”の匂いを、はっきりと嗅ぎ取ったからです。
その“闇”の正体こそが、法律で明確に禁止されているにもかかわらず、今もなお業界に蔓延る「偽装請負(ぎそううけおい)」であり、エンジニアから未来を奪う「多重請負」の構造悪です。
この記事は、単なるSES業界の解説ではありません。
フォロワーがほぼいない、無名のエンジニアにさえ群がってくる「彼ら」の正体とは何か。
そして、その甘い言葉の裏で、どれだけ多くのエンジニアが、知らず知らずのうちに「偽装請負」という違法な状態で働かされ、搾取され、心をすり減らしているのか。
僕がかつて体験した「5社による多重請負(単価120万→30万の中抜き)」という地獄の実態。
そして、その偽装請負の構造から自力で抜け出した全記録をここに記すことで、あの日の僕と同じように、今まさに業界の闇の中で苦しんでいるあなたを、一人でも多く救うためのものです。
これは、僕からの「告発」であり、あなたへの「警告」です。
【告発】これがSESの現実。僕が5社に中抜きされ単価30万円になった話

あれは、うつ病から少しずつ回復し、「社会復帰しなければ」と焦っていた頃のことでした。とある無名のエージェントから紹介された案件。当時の僕は、仕事を選べるような状況ではなく、「とにかく、現場に戻れるなら」と、その話に飛びつきました。
クライアントは、誰もが知る大手企業。案件単価は月額120万円だと聞かされました。
(120万円…!)
当時の僕にとって、それは希望の光そのものでした。これだけの単価であれば、生活を立て直し、借金の返済にも光が見える。
しかし、その希望は、商談の日、そして入場初日にして、音を立てて崩れ去ることになります。
なぜ120万円が30万円になるのか?IT業界の“中抜き”構造
まず、あなたに理解してほしいのが、SES業界に存在する「商流」と「中抜き」という構造です。
これこそが「SESの闇」の正体です。
簡単に言えば、あなたと、実際に仕事を発注しているエンドクライアントとの間に、何社ものIT企業やエージェントが介在し、それぞれがあなたの単価から手数料(マージン)を抜き取っていく仕組みのこと。「商流が深い」ほど、あなたの手元に入ってくるお金は少なくなります。
僕のケースは、その中でも最悪でした。
エンドクライアントが支払う120万円と、僕との間には、実に5社もの業者が存在していたのです。
僕を最初に紹介したエージェント、そのエージェントに案件を紹介した二次請けの会社、さらにその上の一次請け…。まるで伝言ゲームのように、僕という「商品」は右から左へと流され、そのたびにマージンが抜かれていきました。
その結果、僕に提示された単価は、いくらだったと思いますか?
月30万円でした。
120万円の案件が、僕の元に届く頃には、90万円もが中抜きされ、わずか4分の1になっていた。
これが、僕が直面した「多重請負」の現実です。
人身売買さながらの商談
その異常性は、商談の時点ですでに明らかでした。
指定された喫茶店に行くと、僕を担当するエージェントの営業が待っていました。しかし、彼と話したのも束の間、すぐに別の男が現れます。「二次請けの〇〇です」と名乗るその男に、担当エージェントは僕の経歴書を渡すと、「では、あとはよろしく」と、そそくさと帰ってしまったのです。
まるで、人身売買じゃないか…。
その後も、三次請け、四次請けの営業が次々と現れ、僕はまるでモノのようにたらい回しにされる。彼らは僕のスキルやキャリアに一切興味はなく、ただ、僕という商品を無事にクライアントまで届け、マージンを手にすることしか考えていませんでした。
絶望的な期待値の乖離
そして、入場初日。僕は全てを悟ります。
クライアントの担当者は、僕に「月120万円のプロフェッショナル」としての働きを期待していました。次々と高度な要求が飛んできます。
しかし、僕の心は完全に折れていました。
「なぜ、30万円しかもらっていない僕が、120万円分の仕事をしなければならないんだ…?」
この、クライアントの期待値と、僕のモチベーションとの間にある、絶望的なまでの乖離。
これこそが、多重請負が生み出す、最も罪深い現実なのです。
なぜ多重請負はエンジニアを不幸にするのか?僕が体験した3つの地獄

「単価が安いだけじゃないか」と思うかもしれません。
しかし、多重請負がエンジニアにもたらすダメージは、そんな単純な話ではありません。
それは、じわじわと、しかし確実に、あなたの人生そのものを蝕んでいく劇薬です。
僕が実際に体験した、3つの地獄についてお話しします。
地獄①:経済的搾取地獄
まず、最も分かりやすいのが、この経済的な搾取です。
月120万円の案件が、僕の手元に来る頃には30万円になっていた。この差額の90万円は、一体どこへ消えたのでしょうか?
それは、僕とクライアントの間で、ただ右から左へ情報を流すだけで、何の価値も生み出していない中間業者の懐へと消えていきました。
本来であれば、僕の技術と経験に適正に支払われるはずだった90万円。それがあれば、僕は生活に怯えることなく、新しい技術を学ぶための自己投資や、将来のための貯蓄ができたはずです。
しかし、多重請負は、エンジニアからそうした「未来を創るための選択肢」を根こそぎ奪い取っていきます。
日々の生活に追われ、スキルアップもままならず、ただ目の前の仕事をこなすだけで精一杯になる。技術者としての成長は止まり、気づけば市場価値は下がり、さらに安い案件しか受けられなくなる。
これは、エンジニアのキャリアを緩やかに殺していく、経済的な窒息死に他なりません。
地獄②:コミュニケーション地獄
次に訪れるのが、このコミュニケーション地獄です。
ある朝、僕は高熱を出してしまい、どうしても現場を休まざるを得なくなりました。フリーランスとはいえ、当然、休む際には連絡が必要です。
普通の現場であれば、クライアントの担当者に一本電話を入れれば済む話です。
しかし、僕の現場は違いました。
まず、僕の所属元であるエージェントに電話をします。すると、彼はこう言います。「分かりました。では、二次請けの〇〇さんにも連絡を入れておいてください」。
二次請けに電話をすると、「三次請けの△△さんにもお願いします」。
これを、5回繰り返したのです。
体調が悪く、意識も朦朧とする中で、僕は見ず知らずの、そして僕のことなど何とも思っていないであろう5人の営業担当者に、同じ説明を繰り返しました。
そして、悪夢はそれで終わりません。四次請けを名乗る営業担当者は、僕にこう言い放ったのです。
そうですか。では、今日の夕方までに、病院の診断書を提出してください
風邪で寝込んでいる人間に、診断書を取ってこい、と。
これが、彼らにとっての「エンジニア」という存在の扱いです。彼らにとって僕は、自分の商品に傷がつかないか心配なだけであり、僕の体調を気遣う気持ちなど、そこには一切存在しませんでした。
この、無意味で、非人間的なコミュニケーションの連続は、確実に心を蝕みます。
地獄③:精神的消耗地獄(=偽装請負)
そして、最後にエンジニアを破壊するのが、この精神的な消耗地獄です。
現場には、僕に指示を出す人間が複数存在しました。
エンドクライアントの担当者、一次請けのリーダー、そしてなぜか三次請けの営業まで、それぞれがバラバラの指示を、僕個人に出してくるのです。
混乱する指示系統
「カイさん、この作業を今日中にお願い」
「いや、カイさんはそれより、こっちの障害対応を優先して」
「クライアントから、明日の会議資料を作ってほしいと依頼がありましたよ」
一体、誰の指示に従えばいいのか。責任の所在はどこにあるのか。
全てが曖昧なカオスの中で、僕は板挟みになり、少しずつ精神をすり減らしていきました。
この状態こそが、法律で禁止されている「偽装請負」の典型です。
本来、僕に指揮命令できるのは、僕と直接契約している会社の人間だけのはず。しかし、多重請負の現場では、そんなルールは当たり前のように無視されます。
そして、この無責任な体制が、僕をパワハラと、うつ病の発症へと追い込んでいったのです。
補足:「SESはやめとけ」は本当か?
もちろん、全てのSESがこうだとは言いません。
「ses やめ とけ」と検索する人が多いように、地獄のような現場が多いのは事実です。
しかし、中には、エンジニアに寄り添い、素晴らしい環境を提供してくれる「天国」のような現場も存在します。
多重請負という構造は、このような地獄を生み出しやすい、極めて危険な土壌であることは間違いありません。
偽装請負とは何か?あなたが“違法な働き方”をさせられないための最低限の知識

僕が体験した「精神的消耗地獄」(地獄③)。
複数の人間からバラバラの指示を受け、誰のために働いているのかも分からなくなる、あのカオスな状態。
実は、あれこそが法律で明確に禁止されている「偽装請負(ぎそううけおい)」という、極めて悪質な状態そのものなのです。
「法律の話は難しい」と感じるかもしれません。でも、大丈夫です。
あなたが自分を守るために知っておくべきことは、たった一つだけです。
あなたは「指揮命令」を誰から受けているか?
SES(業務委託)契約で働くあなたに、仕事のやり方を具体的に指示したり、命令したりできる(=指揮命令できる)人間は、原則として、あなたと直接契約を結んでいる会社の人間だけです。
エンドクライアントの社員が、あなたに直接「このコードをこう直して」「明日の朝までにこの資料を作って」と指示したり、あなたの労働時間を管理したりすることは、本来許されません。
もし、クライアントの人間が、あなたをまるで自分の部下であるかのように扱っているのであれば。それは「偽装請負」という違法行為の真っ只中にいる、極めて危険なサインです。
厚生労働省が示す、これが偽装請負の判断基準だ
これは僕個人の意見ではありません。
日本の労働行政のトップである厚生労働省が、明確な基準を示しています(「偽装請負 厚生労働省」という検索もありますね)。
あなたの今の働き方が、以下のチェックリストに一つでも当てはまっていないか、確認してみてください。
【厚生労働省】偽装請負セルフチェックリスト
- クライアントから、仕事の進め方について具体的な指示を受けていませんか?(「この手順で作業してください」など)
- クライアントから、勤務時間や休憩時間について管理されていませんか?(「定時まで帰らないで」「この時間は休憩しないで」など)
- クライアントに、休暇や欠勤の承認を求めていませんか?
- クライアントから、直接残業を命じられていませんか?
- クライアントが、あなたの技術的な評価をしていませんか?
僕が心を病んだあの現場は、この5つすべてに当てはまっていました。
あなたはどうでしょうか?
もし、一つでも「当てはまるかも…」と感じたなら、あなたもまた、知らないうちに違法な働き方をさせられている可能性があります。
多重請負という構造は、この「偽装請負」の温床になりやすいのです。
もし偽装請負だったら?通報先は「労働局」です
「当てはまる…じゃあ、どうすればいい?」
「偽装請負の通報先はどこだ?」
と不安になったかもしれません。(「偽装請負 通報 先」は月間500ボリュームの「お宝キーワード」です)
その答えは「労働局」です。
厚生労働省は、このような違法な働き方をなくすため、相談窓口を設けています。
もしあなたが今、まさにこの違法な状態で苦しんでいるなら、一人で抱え込まないでください。
あなたの働き方が「おかしい」と声を上げることは、あなた自身と、未来のエンジニアたちを守ることに繋がります。
参考:厚生労働省公式サイト(相談窓口)
より詳しい情報や、各都道府県の労働局の窓口については、厚生労働省の公式資料をご確認ください。
労働者派遣・請負を適正に行うためのガイド|厚生労働省
【自衛策】悪質エージェントと「偽装請負」地雷案件を見抜くための“5つの質問”

偽装請負の知識を身につけても、「面談の場で、どうやって地雷案件を見抜けばいいのか?」「偽装請負の見分け方は?」と不安に思うかもしれません。
大丈夫です。
僕が数々の失敗の末にたどり着いた、悪質なエージェントや地雷案件をほぼ100%見抜くことができる、シンプルかつ強力な“5つの質問”をあなたに授けます。
これからエージェントとの面談に臨む際は、この質問リストを「お守り」だと思って、必ず投げかけてみてください。相手の反応を見れば、その案件が安全か危険か、手に取るように分かるはずです。
質問①「この案件の商流を教えていただけますか?」
これが、あらゆる質問の中で最も重要かつ、最も効果的な一撃です。
この質問を投げかけた時の、相手の営業担当者の「表情」と「言葉」に、全ての真実が現れます。
優良エージェントの場合
「はい、この案件は弊社がエンドクライアント様から直接いただいている、いわゆる“直請け”案件です」
「クライアント様と弊社の間に、〇〇社が一次請けとして入っています。ですので、カイ様は三次請けという立場になります」
このように、即座に、よどみなく、明確に答えてくれます。彼らにとって商流の透明性は、信頼の証だからです。
悪質エージェントの場合
「えーっと…、そのあたりはですね…」と言葉を濁す。
「その情報は、契約上の守秘義務がありまして…」と話をはぐらかす。
「そんなことを気にするんですか?スキルがあれば関係ないですよ」と、逆にこちらを値踏みする。
もし、相手が少しでも悪質な反応を見せたら、その案件は100%黒です。
商流を明確に答えられない案件は、例外なくあなたが不幸になります。その場で、「結構です」と席を立ってもいいレベルの危険信号だと認識してください。
さらに踏み込む、4つの追加質問
最初の質問で「怪しい」と感じたら、以下の質問でさらに畳みかけてみましょう。
これらは、まさに「偽装請負」を炙り出すための質問です。相手はボロを出さざるを得なくなります。
地雷案件を炙り出す追加質問リスト
- 質問②:「御社とエンドクライアント様は、直接の契約関係にありますか?」
- 質問③:「現場での指揮命令は、どなたから受けることになりますか?」(※偽装請負の核心)
- 質問④:「契約更新の意思確認や、単価交渉の連絡は、どなたからいただけますか?」
- 質問⑤:「勤怠の報告は、何社に提出する必要がありますか?」(※地獄②の回避)
これらの質問は、あなたを値踏みするためのものではありません。
あなた自身が、悪質な環境から自分の身を守り、プロフェッショナルとして尊重されるための、正当な権利であり、最強の武器なのです。
僕は「商流は1社まで」と伝え、搾取から抜け出した

多重請負の地獄を味わい、心を病み、僕はIT業界から一度、完全にドロップアウトしました。
しかし、生活のため、そして何より、エンジニアとしての自分を諦めたくなくて、僕は再びエージェントとの面談の席に着くことになります。
ただし、一つだけ、固く心に誓ったことがありました。
「もう二度と、自分を安売りするのはやめよう。
二度と、彼らの養分になどなるものか」
その決意を胸に、僕は新しいエージェントとの面談に臨みました。一通りのスキルや経歴を話した後、担当者がいくつかの案件を紹介してくれようとした、その時です。
僕は、彼の言葉を遮り、震える声で、しかしはっきりと、こう伝えました。
「案件をご紹介いただく前に、まず僕のポリシーをお伝えさせてください。エンドクライアント様と、僕の間に入る会社は、御社を含めて最大1社まで。つまり、直請けか、二次請けまでの案件以外は、お受けするつもりはありません」
一瞬の沈黙がありました。
正直、怖かったです。「何を生意気な」「仕事を選べる立場か」と、一蹴されるかもしれない。
しかし、僕の目を見て、その担当者は深く頷き、こう言いました。
「…承知いたしました。カイさんのようなご経験をされたのなら、当然の要求です。分かりました、商流の浅い案件に絞って、全力でお探しします」
その言葉を聞いた瞬間、僕は心の中でガッツポーズをしました。
恐怖を乗り越え、自分の意志を伝えたことで、道が開けた。
搾取されるだけの弱い存在から、自らの働く環境を自分で選択する、プロの技術者へと変われた、まさにその瞬間でした。
「NO」と言う勇気が、あなたを搾取から解放する
もちろん、このポリシーを貫くことで、紹介される案件の数は減るかもしれません。
しかし、一つ一つの案件の質は、以前とは比べ物にならないほど高くなりました。
適正な報酬、明確な指揮命令系統、そして何より、エンジニアとして尊重される、健全な労働環境。
「NO」と言う勇気。
それは、目先の仕事を失うリスクを伴うかもしれません。
しかし、その勇気こそが、長期的にあなたのキャリアを守り、あなた自身の尊厳を守る、何より強力な盾となるのです。
あなたがエージェントに伝えるべき言葉は、シンプルです。「大変恐縮ですが、商流が深い案件(三次請け以降)につきましては、私のポリシーとしてお受けしないことにしております。御社とエンドクライアント様の間に介在する会社が1社までの案件で、ご紹介いただけるものはございますでしょうか?」
この一言が、あなたを「SESの闇」の搾取の連鎖から解き放ちます。
なぜ、優良エージェントほど審査が厳しく、地雷業者ほどDMを送ってくるのか

「商流は1社まで」と宣言し、自分を守る術を身につけた僕ですが、一つの大きな疑問が残りました。
「なぜ、本当に力のある優良なエージェントは、エンジニアとの面談で厳しい質問を投げかけてくるのに、僕のフォロワーが1人のアカウントにDMを送ってくるような、よく分からない業者がこれほど多いのか?」
その答えは、彼らが守りたいもの、そして欲しいものの「違い」にありました。
優良エージェントが守りたいもの、それは「信頼」
業界トップクラスのエージェントが、なぜエンジニアを厳しく審査するのか。
それは、彼らが何よりも大切にしているものが、エンドクライアントとの「信頼関係」だからです。
彼らは、クライアントのプロジェクトを成功させるために、本当にスキルと人間性を備えた、信頼できるエンジニアだけを送り込みたい。
万が一、紹介したエンジニアがトラブルを起こせば、長年かけて築き上げてきたクライアントとの信頼関係が一瞬で崩れ去ってしまうことを、彼らはよく知っています。
だからこそ、彼らはエンジニアの経歴を精査し、面談で人間性を見極め、時には厳しい要求もします。
それは、あなたを値踏みしているのではなく、クライアントと、そしてあなた自身との間で「不幸なミスマッチ」を生まないための、プロフェッショナルとしての責任感の現れなのです。
彼らにとって、エンジニアは共にプロジェクトを成功させる「パートナー」なのです。
地雷業者が欲しいもの、それは「手数料」
一方で、あなたの元に突然DMを送ってくるような地雷業者はどうでしょうか。
彼らが欲しいものは、ただ一つ。
あなたを右から左へ流すだけで手に入る「手数料(マージン)」です。
彼らにとって、あなたは「パートナー」ではありません。
あなたは単なる「商品」であり、彼らの懐を潤すための「駒」でしかありません。
あなたのキャリアがどうなろうと、現場であなたがどんなに苦しもうと、彼らの知ったことではない。
契約が成立し、手数料が手に入れば、それで終わりです。
だから、彼らは無差別にDMを送りつけます。フォロワーが1人だろうと関係ありません。数撃てば当たる、と。
審査など、あってないようなもの。とにかく頭数を揃えて現場に送り込み、マージンを抜くことしか考えていないからです。
あなたは「パートナー」を選びますか?「商品」として扱われますか?
この構造を理解すれば、あなたがどちらのエージェントと手を組むべきか、答えは明白なはずです。
目先の「簡単に入れる案件」という甘い罠に飛びつくのか。
それとも、厳しい審査の先にある、本当の「信頼関係」を築けるパートナーを選ぶのか。
あなたのエンジニア生命は、その選択にかかっています。
「ses やめ とけ」と言われる本当の理由、そして僕がこの地獄のSESと「天国」のSESの両方を体験したからこそ分かる「優良エージェント」の見抜き方は、以下の記事に全てまとめています。
「ses やめとけ 40代」「客先常駐 もう限界」 もし、あなたが今、この言葉で検索し、無数の「SES批判記事」の森をさまよった末に、この記事にたどり着いたのなら。きっと、出口の見えないトンネルの中で ... 続きを見る はじめに:40代フリーランス、あなたの「エージェント選び」は間違っているかもしれない 「フリーランスとして、この先も食っていけるだろうか…」 「最近、年齢のせいか良い案件を紹介してもらえない…」 「今 ... 続きを見る
【体験談】「SESはやめとけ」は本当?絶望した40代の僕が"天国のSES"を掴んだ話
【実体験】40代SEが教える信頼できるフリーランス向けエージェント選び3つのコツ
まとめ:あなたの技術と時間は、そんなに安くない

長い道のりでしたが、ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます。
僕が体験した、5社による多重請負という地獄。それは、単に「単価が安かった」という話ではありません。
クライアントが正当に評価してくれたはずの価値(120万円)を不当に搾取され、プロとしての尊厳を傷つけられ、無意味なコミュニケーションで心をすり減らし、偽装請負という違法な状態で働かされ、心身の健康を破壊される。
そう、SESにおける悪質な多重請負は、あなたから自信と、未来と、時間と、そして尊厳のすべてを奪い去る“悪”そのものです。
だからこそ、僕はあなたに伝えたい。
最後に、あなたへ
- 自分を守るための知識(=偽装請負の知識)を身につけてください。
- 面談の場では、勇気を持って「商流は?」と問いかけてください。
- あなたの価値を不当に買い叩こうとする相手には、はっきりと「NO」を突きつけてください。
あなたの技術は、あなたがこれまでの人生をかけて培ってきた、唯一無二の財産です。
あなたの時間は、二度と戻らない、かけがえのない命そのものです。
それらを、ただ中間マージンを稼ぐことしか考えていない、あなたのキャリアに何の責任も持たない業者たちのために、安売りしてはいけません。
最後に。
もし、この記事を読んでいるあなたが、かつての僕のように、業界の闇の中で孤独に震え、心を壊しかけているのなら。
どうか、思い出してください。
あなたが一人じゃない。
あなたの価値は、彼らが決めるものではない。
あなたの技術と時間は、あなたが思っているよりも、ずっと、ずっと尊い。
さあ、顔を上げてください。
搾取の連鎖を断ち切り、あなた自身の価値を取り戻すための戦いは、今、この瞬間から始まります。