これは、あなたが決して見てはいけない「地獄」の記録かもしれない

「会社を辞めて、自由に働きたい」
「実力さえあれば、会社員時代より高収入を得られる」
フリーランスという言葉には、そんな輝かしいイメージがつきまといます。かつての僕も、その光に魅せられた一人でした。会社員という安定を捨て、自分の力だけでどこまでやれるのか試してみたい。そんな思いから、僕はフリーランスという荒野へ一歩を踏み出しました。
しかし、僕がフリーランスSEとして歩んだ10年間は、決して理想郷ではありませんでした。月収60万円という天国を味わう一方で、現場でのパワハラによるうつ病の発症、コロナ禍での完全な失業、そして、常に背後につきまとう「孤独」という名の地獄。その全てを、僕は経験しました。
この記事の約束
この記事は、フリーランスの成功法則を語る、ありきたりなものではありません。
光も闇も、天国も地獄も、僕がこの10年で味わった全ての現実を、包み隠さず記録したものです。
あなたが後悔しない選択をするための、これは「羅針盤」です。
読み進めるうちに、あなたの夢を壊してしまうかもしれません。それでも覚悟があるなら、僕の物語のページをめくってください。
第一部:僕が会社員を辞め、フリーランスという道を選んだ理由

僕がフリーランスへの道を歩み始めたのは2011年。奇しくも、東日本大震災が日本を襲った年でした。その前年、2008年から続くリーマンショックの余波は、僕が勤めていた会社にも暗い影を落としていました。会社の業績は悪化し、昇給は停止、賞与もなくなりました。毎日必死に働いても、未来が見えない。会社という組織の中にいる限り、自分の運命は自分ではコントロールできないのだと、痛感させられました。
そんな閉塞感と焦りが、僕の中で日増しに大きくなっていきました。会社員という立場は、安定しているようで、実は会社の業績という非常に不安定な土台の上になりたっている脆いものなのではないか。それならば、いっそ自分のスキルだけを頼りに、荒波に漕ぎ出してみたい。そんな思いが、僕を「独立」へと駆り立てました。
幸いにも、当時所属していた会社が請け負っていた案件を、個人として引き継ぐ形で独立できる見通しが立ちました。これは大きなアドバンテージでした。ゼロからのスタートではなかったのです。退職の手続きを済ませ、個人事業主としての開業届を税務署に提出した時の、不安と期待が入り混じった高揚感は今でも忘れられません。
最初は「白色申告」からのスタート。経理の知識もほとんどなく、とにかく目の前の仕事をこなすことで精一杯でした。月の手取りは28万円程度。会社員時代と比べて劇的に収入が上がったわけではありません。しかし、そこには確かに「違い」がありました。満員電車に乗る必要も、理不尽な社内政治に付き合う必要もない。自分の判断で仕事を進め、結果に対する責任をすべて自分で負う。その緊張感と自由さは、何物にも代えがたい魅力でした。
もちろん、そこには会社員時代にはなかった「全てが自己責任」という重圧も、確かに存在していました。仕事がなくなれば収入はゼロになる。病気や怪我で働けなくなっても、誰も助けてはくれない。その厳しさを、僕はまだ本当の意味では理解していませんでした。この先に待ち受ける地獄を知らずに、ただ目の前の自由を謳歌していたのです。
第二部:天国と地獄|収入の波と、心を蝕んだ「パワハラ」

フリーランスの道は、まさにジェットコースターのようでした。収入が青天井に増えていく天国のような時期もあれば、心を完全に破壊される地獄のような時期もありました。
天国:月収60万円と、フリーランスの醍醐味
2014年、僕は「青色申告」に変更し、節税への意識も高まりました。同時に、フリーランス専門のエージェントに登録し、より高単価な案件に挑戦するようになります。自分のスキルセットや経験をエージェントに正しく評価してもらい、これまで出会えなかったような企業の案件に参画できるようになると、収入は大きく跳ね上がりました。
特に需要の高かったスキルを活かせたプロジェクトでは、報酬は面白いように上がっていき、ついに月収60万円を達成します。会社員時代には考えられなかった金額が、自分の銀行口座に振り込まれた時の衝撃と喜びは、筆舌に尽くしがたいものでした。
自分のスキルが、市場価値としてダイレクトに報酬に返ってくる。好きな時間に働き、実力が正当に評価される。これこそがフリーランスの醍醐味だと、僕は心の底から感じていました。努力が直接結果に結びつく感覚は、会社という組織の中で歯車として働いていた頃には、決して味わえなかったものです。この時期の僕は、間違いなくフリーランスという働き方の「光」の部分だけを見て、完全に有頂天になっていました。
地獄:心を壊したパワハラと、うつ病の発症
しかし、その天国は長くは続きませんでした。光が強ければ、影もまた濃くなる。その真理を、僕は身をもって知ることになります。
2016年、ある大手企業のプロジェクトに業務委託として常駐した際、僕は常駐先の社員(プロパー)から、度重なるパワハラを受けることになります。立場上、僕の方がスキルも経験も上であることは明らかでした。しかし、彼はそれを認められず、自分の思い通りに事が進まないと、僕を個人攻撃の対象にしたのです。
「そんなことも分からないんですか?本当にプロですか?」
会議の場で、他のメンバーの前で、理不尽な叱責や人格否定の言葉を何度も浴びせられました。業務委託という弱い立場では、言い返すことも、契約を打ち切られるリスクを冒してまで強く抗議することもできません。僕は、ただ耐えるしかありませんでした。毎日、胃が締め付けられるような思いで出勤し、心は少しずつ、しかし確実に蝕まれていきました。
そしてある朝、僕はついに起き上がれなくなりました。体が鉛のように重く、全く動かない。涙だけが、理由もなく溢れてくる。心療内科を受診した僕に下された診断は、「適応障害」そして「重いうつ病」でした。
ドクターストップがかかり、僕はその現場を離れることになりました。しかし、それは問題の終わりではありませんでした。一度「メンタルに問題がある」という評判が立つと、エージェントからの紹介は目に見えて減っていきました。やっとの思いで新しい現場に入っても、うつ病の症状は簡単には消えず、パフォーマンスが上がらない。集中力が続かず、簡単なミスを繰り返してしまう。そんな自分が許せず、さらに自己嫌悪に陥る。まさに、負のスパイラルでした。
次々と契約を切られ、エージェントからの信用も失っていく。収入が途絶え、僕は日々の生活費のために、再び消費者金融のカードに手を出さざるを得ませんでした。あの時の恐怖と絶望は、僕の人生における、本当の「どん底」でした。フリーランスという働き方の、最も暗く、冷たい闇を、僕は骨の髄まで味わったのです。
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第三部:孤独と税金の罠|フリーランスが本当に向き合うべき敵

フリーランスの本当の敵は、手強いクライアントやスキル不足だけではありません。むしろ、本当に恐ろしいのは、目に見えない、静かに、しかし確実にあなたを蝕んでいく2つの大きな敵です。
1. 誰にも相談できない「孤独」
うつ病で仕事が減り、家に引きこもる時間が増える中で、僕はフリーランス特有の「孤独」の恐ろしさを痛感しました。会社員であれば、たとえ嫌なことがあっても、同僚や上司に愚痴をこぼしたり、ランチで他愛ない雑談をしたりすることで、気持ちを紛わすことができます。しかし、フリーランスは、全ての悩みと不安を、たった一人で抱え込まなければなりません。
「自分のスキルは、もう時代遅れなんじゃないか…」
そんなネガティブな思考が、静かな部屋で一人、パソコンの画面と向き合っていると、無限に増幅されていきます。誰にも相談できない。誰も助けてはくれない。社会から完全に孤立してしまったかのような感覚は、僕の心をさらに追い詰め、うつ病の症状を悪化させる大きな原因となりました。フリーランスの「自由」は、「孤独」と常に隣り合わせなのです。
2. 容赦なく襲い来る「税金」という現実
そして、もう一つの静かな敵が「お金」、特に「税金」と「社会保険料」の問題です。会社員時代は、給料から天引きされることで、その存在をあまり意識していませんでした。しかし、フリーランスになると、これらが巨大な怪物となって、容赦なく襲いかかってきます。
僕の場合、それは最悪の形で現実となりました。フリーランス時代の収入が不安定な中で、僕は学生時代に借りた奨学金の返済を滞納してしまったのです。その結果、債権者から一括返済を求める訴訟を起こされ、自宅に裁判所からの特別送達が届いた時の衝撃は、血の気が引くという言葉では生ぬるいものでした。なんとか弁護士に相談し、分割での和解に持ち込みましたが、精神的なダメージは計り知れません。
また、フリーランスになって初めて直面する「確定申告」も、大きな壁でした。白色申告と青色申告、どちらを選ぶべきか。経費はどこまで認められるのか。日々の領収書の整理や帳簿付けの煩雑さ。そして、全てを計算し終えた後に、忘れた頃にやってくる住民税や国民健康保険料の、目の玉が飛び出るような請求額。これらは、会社が陰で支えてくれていた時には決して見えなかった、フリーランスの厳しく、そしてリアルな現実でした。稼いだお金が、全て自分のものになるわけではない。この当たり前の事実を、僕は何度も痛感させられたのです。
参考情報
青色申告と白色申告の違いについては、国税庁のウェブサイトで詳しく解説されています。フリーランスを目指すなら、必ず一度は目を通しておくべきです。
第四部:フリーランスの「闇」を乗り越える唯一の方法

では、僕が経験したような「パワハラ」「孤独」「不安定さ」といったフリーランスの闇から、どうすれば自分を守れるのでしょうか。10年間を経験した僕がたどり着いた結論は、たった一つです。
それは、「信頼できる、優秀なエージェントをパートナーにすること」です。
パワハラのような問題が起きた時に、あなたの代わりに企業と交渉してくれる「盾」となり、仕事が途切れそうな時に、あなたのスキルと経験を正しく評価し、次の案件を探してくれる「羅針盤」となる存在。それが、優秀なエージェントです。
僕自身、エージェント選びで何度も失敗し、多くの時間を無駄にしました。だからこそ、その経験から導き出した、40代のSEが後悔しないための「本当に信頼できるエージェントの選び方」の全てを、以下の記事にまとめました。フリーランスとして戦うなら、この記事はあなたの必読書となります。
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第五部:終わりの始まり|コロナ禍での失業と、僕が「正社員」に戻った日

ボロボロの状態ながらも、単発の案件をこなすなどして、なんとかフリーランスとして働き続けていた僕に、最後の、そして決定的な引き金を引いたのが、2020年のコロナウイルス蔓延でした。
日本中、いや世界中が未曾有の混乱に陥る中、企業は一斉に投資を控え、プロジェクトを凍結しました。僕のような外部のフリーランスは、真っ先に契約を切られる対象でした。昨日まであったはずの仕事の打診が、まるで蜃気楼のように消えていく。エージェントからの連絡も、パタリと途絶えました。
僕のフリーランスとしての仕事は、完全に、そして突然にゼロになりました。
貯金を切り崩す生活にも、すぐに限界が来ます。僕は、プライドを捨て、生きるためにパートタイマーとして働く道を選びました。時給1800円。かつての収入とは比べ物にならない現実が、僕に重くのしかかりました。フリーランスとして積み上げてきた10年間のキャリアは、一体何だったのか。無力感と自己否定の念に、押し潰されそうでした。
その時です。僕が、あれほどまでに求めた「自由」を手放し、再び「安定」という港に戻ることを決意したのは。
それは、フリーランスとしての10年間の成功も失敗も、プライドも後悔も全て飲み込んで、新しい人生を歩むための、僕の大きな、そして最後の決断でした。フリーランスという働き方は、社会という大きな船が揺らいだ時、あまりにも脆く、弱い立場なのだと、僕は骨身に染みて理解したのです。
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まとめ:それでも、僕はフリーランスになったことを後悔していない

地獄のような経験もしました。お金、信用、健康、家族、多くを失いかけました。しかし、不思議なことに、僕はフリーランスになったことを一度も後悔していません。
なぜなら、この10年間で得た経験は、お金には代えられない、僕だけの財産だからです。会社という組織の理不尽さから逃れたい一心で飛び出したあの日から、僕は多くのことを学びました。
僕がフリーランスになって手に入れた、本当の宝物
- 会社に依存せず、自分の力で生き抜くという「自信」
- 税金や法律と向き合い、社会の仕組みを知る「知識」
- どんな困難な状況でも、道を切り開こうとする「精神力」
フリーランスは、決して楽園ではありません。華やかな成功の裏には、僕が経験したような、語られることのない地獄が広がっています。しかし、この記事で語った「地獄」と「現実」の全てを知った上で、それでも挑戦したいと願うあなたを、僕は止めるつもりはありません。その道は、あなたを人間として、間違いなく成長させてくれるはずだからです。
このブログでは、僕の失敗と成功の全てを元に、あなたがフリーランスとして後悔しないための具体的なノウハウを、今後さらに詳しく解説していきます。まずは、フリーランスの生命線とも言える「エージェント選び」から、学びを深めてみてください。
僕の地獄が、あなたの天国への地図になることを願って。